ニャースのかきくけこ

ニャースはアニメ、ゲーム界のベンジャミン・フランクリン。

2020年3月に読んだ本

2020年3月に読んだ本

 

 1.

高齢化社会を迎え今後さらに生産人口が減っていく日本だが、IoT、AI、ロボット、通信の高速化、センサのさらなる汎用化といったイノベーションによって第一次産業である農業が今後もGDPベースで成長を続けていくという明るい未来の本。直近(主に2010年前後)で実用化され、現場で試験され始めた新しい機器がたくさん紹介されているので読んでいるだけで勉強になる。昨今の技術イノベーションが特に農業と親和性が高いと著者は説明するが、これらの技術革新が土台となって、ますます成長していく余地のある分野はきっと他にも無数にあるだろう。これらの技術革新をどのように農業に適用させるか?の試行トレンドを説いたのが本書だが、日本が今後も世界の中で影響力と競争優位を保ち続けるために、ロボットやセンサ、通信といった地盤をこそしっかり固めておかないといけないと感じた。

 

 

2.

逆境を生き抜くリーダーシップ
 

アメリカの鉄鋼メーカ「ニューコア」で長きに亘りCEOを務め、粗鋼生産量ではマイナーだった同社をUSスチールも抜いて1位の事業規模へ導いたケン・アイバーソンの著書。
ひとつの工場という事業所単位で自律的に組織運営をさせ、本社からは口を挟まない。そのために本社所在地を人里離れた田舎に置き、間接の人員もミニマム化させた。会社としての統一方針や仕様のようなものがないので、事業所間で似たような開発や検討をすることもあるが、そういったことにより発生する工数の無駄より自主性に任せて運営させることによるメリットが圧倒的に大きいと説く。
著者は理論家ではなく、実際のビジネスの成功体験がバックボーンにあるので、突飛な提案でも一考せざるを得ない。
小難しいフレームワークなんかまったく出てこず、一貫して著者が主張するのは「社員を信じて自由にやらせる」だ。こういった「管理」を極限まで減らすという考え方は岐阜県にある未来工業にも似たものがあると感じた。

特に印象に残った部分を以下に抜粋する。
ニューコアには勤務査定というものがない。従業員は自分が生み出すものに応じた賃金を得るし、その賃金は単純かつ客観的に決定される。職務内容を記した書類もない。社員はみずからの生産性を最大にする方法を探りながら、自分の仕事を定義するのだ。”

 

 

3.

本書で紹介された施策は、すべて社員を信じてその自主性に任せきるからこそ発案、実践できるものだ。人に管理されることをいかに人は嫌うかは、管理される側を経験した人なら皆分かっているけど、そのルールというか在り方が当たり前でそれ以外の解があることを知らないからいざ自分が管理職になった時に同じことをしてしまう。未来工業のホウレンソウ禁止なんていうルールは、社員を完全に信用して任せないと普通の会社では絶対にできない芸当だ。同社はこのような世間から見れば突飛な会社方針で創業以来46年も黒字決算を続けているのだから、いかにすごいかがよくわかる。会社としてのルール整備以外にも、例えばとある電設部品で売れ筋商品の周辺のマイナー品で実用新案を先に大量に取ってから売れ筋商品の販売を始めるといった著者の事業戦略的な部分も垣間見えて参考になった。

 

 

4.

ロボットとシンギュラリティ

ロボットとシンギュラリティ

  • 作者:木野仁
  • 発売日: 2019/08/27
  • メディア: 単行本
 

ロボット工学者が過去から現在までのロボットの変遷について冷静に語った本。著者によると昨今マスコミで喧伝されているようなAIや人工知能の発達によって、特定の職業が今後10年でなくなるといったことは過剰に煽りすぎだと指摘する。偏りすぎていないのでニュートラルな気持ちで読めた。
本書で紹介された様々なロボットの中で興味を持ったのは、TITAN-XI、東大の情報システム工学研究室が開発中の空中浮遊するドラゴン、ロシアの原子力魚雷ポセイドン。3つ目はロボットに該当するのか微妙だが、人工知能で海中を自動航行するのである意味ロボットと言えるだろう。ロボットの種類や最新技術について広く学べる良書だと思う。

 

 

5.

「スマート革命」で成長する日本経済

「スマート革命」で成長する日本経済

 

図書館で借りて飛ばし読み。家庭の電力量計に通信機能を持たせてリアルタイムで使用量/コストを見える化すれば確かに節電の意識は持つかもしれないが、それ以上に発展することもない。スマート化は単品で実施しても効果が薄く、ひとつの家庭の中でも幅広い機器が、供給側の電力会社も含めた地域全体がつながることによってシナジー的に効果が増してくるのだろう。その”効果”というものが、具体的にどんなものでどれだけのうれしさがあるかと言うのは、まだ実は明確になっていなくて、スマート化によって即時性と双方向の情報授受が実現できた時、どんなことができるかを実証試験で模索している段階のように思えた。
パッケージ型インフラ輸出については日立やJR東日本の取り組みが紹介されていて、今後の日本の経済的成長について希望を持てるような内容だった。単品販売のコストだけでは勝負できないので、運用ノウハウや保守、周辺サービスなど包含的にパッケージ化してこそメリットが出せるのだろう。

 

 

・・・ということで、3月は5冊。後半が弟の結婚式に関連した準備なんかで失速。

最近になって図書館をまた利用し始めたのと、コロナウイルスで外出しにくいのもあって4月はさらに読書数を伸ばしたい。

図書館は今は、2週間おきで返却期限の日に返しに行ったついでに新しいのを借りてるけど、毎週行けるようになりたいな。そのためには読書スピードをもっと上げなければ。

 

読書メモ:「出光佐三 魂の言葉-互譲の心と日本人」 滝口凡夫

 

特に印象に残ったのが以下の部分。
”互譲互助、無我無私、義理人情、犠牲とかはみんな「お互い」からでてきている。大家族主義なんていうのも「お互い」からでてきている。その「お互い」ということを世界が探している。”
他の国と陸続きではなく侵略もされてこなかった日本が地理的な背景を通して育んできたこれらの思想は、いまの世界的な基準で見れば時代遅れで改めるべきものだと思っていたが、そうではなく、むしろいま世界に啓蒙してかないといけない、ていうのは自分の中で新しい視点だった。

 
 *
 
以下、読書での私的メモ。
 
知るところを忘れて行うところを知る。
 
 
復興への檄
この際、店員諸君に三つのことを申し上げます。
一、愚痴をやめよ
一、世界無比の三千年の歴史を見直せ
一、そして、いまから建設にかかれ
愚痴は泣き言である。亡国の声である。婦女子の言であり、断じて男子のとらざるところである。ただ、昨日までの敵の長所を研究し、取り入れ、おのれの短所を猛省し、すべてをしっかりと肚の中にたたみ込んで、大国民の態度を失うな。
 
 
互譲互助、無我無私、義理人情、犠牲とかはみんな「お互い」からでてきている。大家族主義なんていうのも「お互い」からでてきている。その「お互い」ということを世界が探している。
 
 
鈴木大拙氏の話を聞いて、佐三は次のように感じた。
「心が発達した人は、知恵も悪い方には使わないもので、心をつくるために、宗教や哲学、教育や修養というものがあるのだろう」と。
「物の世界」では心が軽視されていて、対立闘争に至る。「人の世界」では、心を尊重し、精神の積み重ねができているから、知恵を対立ではなく平和のほうに使うことができるようになる。物ではなく、心が尊重される世界が「知恵の世界」なのだ。
 
 
資本は人である。金ではない。
 
 
なにも外国に物の面で追いつかなくてもいいじゃないか。それよりも外国の人に向かって、心の豊かさと心の富のあり方に追いついてこい、それが平和に通ずる道だ、と教えてやったらどうだい。
 
 
創業に際し、まず営業の主義を社会の利益に立脚せんとしました。
事業の生命は社会とともに永久であるからです。
 

読書メモ:「男の生き方 誇り高く、信念をもて」 川北義則

 

男の生き方 誇り高く、信念をもて

男の生き方 誇り高く、信念をもて

  • 作者:川北 義則
  • 発売日: 2011/02/08
  • メディア: 単行本
 

村上龍の「すべての男は消耗品である」のような力強く、奮起されるようなものを期待していたが、その意味では期待はずれだった。賛否両論巻き起こるような突飛な主張というのは本書には少なく、いずれも常識の範囲内というかありきたりな感じで新鮮な気付きはあまりなかった。アポロ月面着陸時にひとりで月の裏側を回った飛行士の絶対的な孤独という話はおもしろかった。

 
 *
 
以下、読書での私的メモ。
 
正義というから難しくなる。これを「義」という言葉に置き換えた方がわかりやすいだろう。義は儒教五常仁義礼智信)の一つである。正義にはかなり公の部分が入るが、義は個人が感じて行えばいいものだからだ。
 
 
いまの男がダメなのは、「男としての目標」がないからである。目標を持つことに関して、イギリスの思想家カーライルがいいことを言っている。
「目標がないくらいなら、邪悪な目標でもあったほうがいい」
 
 
「人のせいにするな」とよくいわれるが、人生はよくも悪くも他人との関わり合いで決まってくるから、よくも悪くも人のせいだといってもいい。よい場合は「おかげ」といい、悪い場合を「せい」という。
 
 
男は泣きたくても人前では泣かない、という不文律が日本にはある。そのことを指摘して、夏目漱石は次の言葉を残している。「感情を発表せぬ事に日本人ほど熟練した者はない。たまに泣くと男泣きと云う。泣き方に男性女性があるのは日本ばかりであろう」
 
 
アポロの月面着陸のとき、船内に残った宇宙飛行士は、二人の飛行士が月面で作業をしている間、たった一人で四十五分間、月の裏側を回った。月の裏側は、地上からいかなる追尾もできない。それを知っている飛行士は、かつて人類の誰も経験したことのない「絶対の孤独」の時間を過ごしたのだ。これに比べれば、この地球上で、一人で生きることなど、どうということはないではないか。
 
 
人付き合いには「鏡の法則」が成り立つ。こちらがきちんと応対すれば、自ずと向こうの態度も改まる。こちらが嫌えば向こうも嫌う。こちらが非礼ならば、向こうも非礼で応じてくる。仲良くしたければ、相手がどうであれ、挨拶惜しみはやめたい。
 
 
「狭き門を通って入りなさい。滅びに至る道は広くて大きく、それを通って入っていく人は、多いからです。一方、命に至る門は狭く、その道は狭められており、それを見出す人は少ないのです」
新約聖書マタイ伝7章13、14節)
 
 
花火は英語ではファイアーワーク、つまり、ただの「火仕事」。味も素っ気もない。だが、日本語では、夜空に映える壮大な火を「花」に見立てている。なんと美しいことか。日本語には、この手の美学がちりばめられているのだ。私たちは、この微妙繊細な日本語を操ることで、高い感性を養ってきた。