ニャースのかきくけこ

ニャースはアニメ、ゲーム界のベンジャミン・フランクリン。

2020年6月に読んだ本

2020年6月に読んだ本

 

1.

さるのこしかけ (集英社文庫)

さるのこしかけ (集英社文庫)

 

相変わらずのハズレがない面白さ。順当に考えれば「インド駆けめぐり記」が最も読み応えがあり、大麻さんというネーミングインパクトを持つサポートキャラの存在もあいまって1番面白いということになる。確かに羽田空港で合流する地点から大麻さんは意図せず本領を発揮しまくり、面白くなる予感しかなかったのだが、ぼくはインド旅行よりもなぜか「夏の病院」が印象に残った。さらっと短文で終わるこのエピソードがどうしてこうも記憶に残るのか、それは赤面するような自身の体験も、第三者的な視線を交えてエッセイとして作品化できる作家としてのさくらももこの真骨頂が垣間見えるから・・・かもしれない。それと「飲尿をしている私」は衝撃だった。便秘を完全に解消できるのは魅力だが、それをするのはちょっと、と現時点での自分は拒否反応を起こす。

 

 

2.

8歳で脳は決まる! 子どもを救う父親の力

8歳で脳は決まる! 子どもを救う父親の力

  • 作者:平山 諭
  • 発売日: 2005/10/20
  • メディア: 単行本
 

幼少期(この本では『8歳』頃まで。子どもの意識を変えやすい最後の時期として脳科学の観点から選んだらしい)に父親の適切な関与がいかに大切かということ。大切だというのには万人が同意するだろうが、具体的にどう関与すべきかという記述はそう多くない。中盤の少年犯罪の紹介は何の意味があるのかよく分からなかった。広く浅く並べ立てるより、取り上げる事件数は少ないとしても幼少期にどうだったかと加害者がその犯行に至った経緯を詳述してほしかった。

 

 

3.

単純な脳、複雑な「私」 (ブルーバックス)

単純な脳、複雑な「私」 (ブルーバックス)

  • 作者:池谷 裕二
  • 発売日: 2013/09/05
  • メディア: 新書
 

受講を希望した高校生の中から抽選で選ばれた男子9名が春休み中の3日間で特別授業として受けた講義録に加筆修正したのが本書。10代の学生相手だが、話は相当にディープな部分まで入り込んでいくので大人も存分に楽しめる内容だ。色々と衝撃的な事柄が登場するが、自分が特に印象に残ったのは、ピンクの斑点、逆さメガネの世界にもやがて順応してしまって僕らが知覚している正しい世界って何なのかという話、指令よりも先に行動している話の3つだ。特に一番最後は衝撃で、何度も繰り返し読んだが未だに信じられない。おったまげである。まだまだ未知なことも多い分野だが、同時に相当に解明が進んでいる分野でもある。あとがきに著者のアウトリーチ活動に関する思いの吐露もあり、色々な意見や考えもある中、このような企画が実現し書籍化されて自分が読めたことは本当に幸運だと有り難く思う。背表紙にある竹内薫さんの紹介文「脳に関する本はあまたあるが、これだけ勉強になり、かつ遊べる本も珍しい」に自分も激しく同意する。

 

 

4.

小泉今日子書評集

小泉今日子書評集

 

益田ミリ著『ほしいものはなんですか?』の書評の中で、小泉今日子の次の言葉が強く印象に残った。
”子育てをしている友達と会っている時、お互いに少し気を使って会話を選ぶ瞬間がある。ないものねだりと分かっていながら、それぞれの環境を羨ましいと思ってしまうこの感覚、男の人には一生分からないんだろうなと思う。アラサーとか、アラフォーとか元気な言葉の響きで自分たちを盛り上げているけれど、それなりの悩みがあるのだ。”
隣の芝生は青い的なこういった感情になるのは何も女性だけではない、と言いたくなったが、ここの文脈的に、子育てで家庭に入るか、社会でキャリアを重ねるかの二者択一をしなきゃならない女性ほどの人生の転換点は男性にはないだろう、という静かな主張はまあそうかもな、と妙に納得した。
書評を見ていくつか読みたくなった本があるが、その中で最も気になるのが「変愛小説集」だ。これは必ず読む。(「愛」ではなく「変」)

 

 

5.

さくら日和 (集英社文庫)

さくら日和 (集英社文庫)

 

新福さんを讃える会が際立って面白い。企画する人たちもそれはそれですごいけど、訳も分からず参加してすぐに意図を理解して盛り上げ役になるパーティー出席者たちもすごい。しかし何よりすごいのは、仕事の延長でそれだけ信頼され、感謝される新福さん本人だろう。巻末におまけとしてさくらももこが書いた讃える会のシナリオが載っている。これだけ読んでも「ほんとにおもしろいのか、これ・・・?」と見切り発車で主催側が内輪で暴走してるだけのように見えなくもないが、きっと「讃える会」なのであり、本質的には善の行いなので若干のおふざけはあったとしても盛り上がったんだろう。そう信じたい。他、健康の話も面白かった。ワインを自家製にしたり、ある部分での行動力は本当にすごいなーと見習いたくなる。

 

 

6.

2年振りに読んでみた。サーボ技術全般の網羅性、中身の難易度的に自分にとっては良書だ。月日が経ったのもあって、機械要素のところは以前読んだ時よりは幾分簡単に感じられた。PID制御のPとIとDが具体的に何を意味するか、個別に調整した時の出力に与える影響が何かというのをやっと理解することができた。

 

 

7.

最強マフィアの仕事術

最強マフィアの仕事術

 

マフィアの世界で若くして組織の上流への上り詰めたという著者だが、最後まで本書を読んだ感想は、正直拍子抜けした、だ。ジェノヴェーゼファミリーのカポ、マリオとの話し合いや、著者がマフィア時代に実父とノービィ・ウォルターズとの交渉(シットダウン)の描写は臨場感があって読み応えがあって面白った。しかしそういったのはごく一部で、本書の大部分は巷によくあるビジネス書や自己啓発書に書かれてあるのと何ら変わらない。具体的には、信頼できる仲間を見つけろ、ビジネスの成功には努力が必要、税金は必ず払え等々。
元マフィアの著者が、「企業犯罪は割に合わない」「違法行為は必ず誰かが見ている」と説くのは、もはやなんと表現すれば良いか分からない。丸くなって一般論を述べるのではなく、シットダウンでは沈黙を通すなどマキャベリ的思想にもっとフォーカスしてほしかった。

 

・・・ということで6月は計7冊。以外にたくさん読めたので自分でもびっくり。早朝の時間をできるだけ読書に充てていきたい。